人は誰でも悲しいことや失敗を体験すると、落ち込んだり憂鬱になりますが、多くは時間がたてばもとに戻ります。ところが、落ち込んだ気分が長く続き、生活に支障がでる場合、治療の対象になります。
うつ病は一生涯に一度でもかかる方が人口の10%もあり、今や生活習慣病と並んで大変ポピュラーな病気となっております。しかし多くの場合、最初からうつ病を疑って医療機関を受診されることは少なく、大抵の場合はカラダの不調と考えて内科をはじめとする一般科を受診されることが多いようです。
うつ病の場合も、他の病気と同じように早期発見・早期治療が大切です。
気分の症状 | 気分が落ち込む。自信がなくなる。 |
思考の症状 | 集中力、判断力の低下。悲観的で自責的な考え方になる。 |
意欲の症状 | 気力がなくなる。おっくうになる。楽しいと感じられずに興味がわかなくなる。 |
身体の症状 | 不眠、食欲低下、だるい、肩こり、頭が重い、胃の不快感、便秘、性欲低下。 |
心理的な負担 | 仕事量の増加や家庭内のトラブルによる過労。 |
環境の変化 | 職場の配置換えや引っ越しなど。 |
喪失体験 | 子供の独り立ち、肉親の死去など。 |
身体的な負担 | 妊娠、出産、閉経、リウマチ、老年痴呆、脳梗塞後遺症など。 |
薬の副作用 | 高血圧治療薬、経口避妊薬、副腎皮質ホルモン、インターフェロンなど。 |
うつ病は、きちんとした治療を受ければ良い方向に向かいます。治療の基本は、薬(坑うつ薬)を飲むことと、休養を取ることです。
うつ病の自己診断をしてみませんか?
うつ病セルフチェック表 (PDF:62KB)
1 | 気分がゆううつで、うっとうしい |
2 | 何事にも関心を持てず、楽しめない |
3 | 何をするのもおっくう |
4 | 仕事の能率が悪くなった |
5 | 疲れやすい |
6 | 気力がわかない |
7 | 自信がない、ダメ人間になった |
8 | 他人に迷惑をかけていて申し訳なく感じる |
9 | 集中力が落ちてしまい、思考力も低下している |
10 | 物事の判断ができない |
11 | 食欲がなく、体重も減った |
12 | 夜眠れない(寝つけない/夜中に何回も目がさめてしまう/朝の早い時刻に目がさめてしまう) |
13 | 生きているのがつらい |
14 | 憂うつな気分やおっくうさは特に午前中に強く、夕方になると少し楽になる |
以上の多くの症状が「ほとんど毎日、一日中」あって、それが2週間以上続いているとうつ病の可能性があります。特に、項目の1または2(あるいは1と2の両方)に当てはまって、その他の症状(3~14まで)の半数以上が該当する場合には、ぜひご相談なさることをおすすめいたします。
日常の活動(たとえば、掃除にかかる時間、歩くスピードなど)すべてにわたる能力や行動であるパフォーマンスが落ちていきます。なんとなくいつもの自分と違っていると思いながら気のせいだと判断して、自分が病気であることにはまだ気づいていません。
この時期には、よく眠れないという症状があります。
のいずれかがみられます。
いやな夢を見ることもあります。
現実的な夢で、職場で上司から叱責されている、あるいは誰かに自分が追い詰められたり、死骸などが体に降りかかるといった、においや感触も伴った夢であったります。昼間、突然ストンと眠りこけてしまう。大事な会議の時にでも、我慢できずに寝てしまうということもよくあります。
うつ病になると食欲不振により2~3ヶ月で4~5キロやせてしまいます。
また、微熱も多く見られる症状です。
うつ病の原因は、うつ病になりやすい体質の人が、さまざまなストレスを感じ、脳内のストレス制御機構に不均衡を起こします。自律神経の状態が変化して、常に神経が緊張をしている、交感神経優位な状態になります。そのために体温が上昇することが多いのです。
さらに、身体のあちこちに痛みを感じます。最も多いのは頭痛です。
前頭部の違和感や、頭の中を押さえつけられるような感覚、偏頭痛タイプ、肩・首、後頭部とつながるような痛さ。歯を磨こうとすると、吐き気やめまいも起こるようになります。平衡感覚がなくなり、壁や物にぶつかったり、よろけたり、転んだり、けがをしやすくなります。
身体の重さ、疲れやすさを強く意識し、とくに朝の体のだるさ、布団から起きられないといった症状がみられます。朝調子が悪く、午後から調子が上がるといううつ病独特の変化を日内変動といいます。
天候による影響もあります。
特に気圧が下がることで脳内のストレス制御機構へのストレスが加わり、うつ病状態を悪化させます。雨の日、天候が崩れるよな日、台風などによる気象の変化をいち早く感じるようです。
うつ病は、脳の前頭葉の機能が落ちる病気です。注意力・集中力が低下します。気持ちが落ち込むといった感情の変化よりも先に物忘れをするといった認知機能が低下するようです。
例えば、「本や雑誌など同じところを何度も読んでしまい、物語の筋が追えない」「バラエティー番組を見ても楽しいと思わない」「テレビを見るのも億劫。音楽が耳障り」「いつも会っている人の名前が思い出せない」「言葉がうまく喋れない」「固有名詞が出てこない」など、日常の会話での違和感を覚えるようになります。
記憶の中枢として知られる脳内の海馬などの機能低下が起こり、一時的には、記憶力の障害が目立つこともあります。うつ病の記憶障害は一過性のものであり、回復すれば元に戻ります。
また、感情も次第に鈍麻していきます。
趣味や関心ごとにもさっぱり楽しみを感じられない。何を見ても、聞いても感情がわかなくなります。早期には感情が異常に過敏になることもあります。急に怒り出したり、暴言を吐いてしまう。そうした行動をしてしまってから、なぜ自分が制御できない行動をしてしまったのか不思議がることも多いです。
今までと違う「小さな変化」に気づき、早期に対応することにより回復も良好となります。
わが子が受験を控えると、それまでの数ヶ月~1年くらいの間は、親としてはつい勉強の進み具合が気になってたまらないでしょう。とはいえ、この時期のお子様への対応には注意が欠かせません。
受験を控えたお子様は、どこの家庭でも神経質になっているものです。 そのために成績が伸び悩んだり勉強の進捗がかんばしくなかったりすることも珍しいことではありませんが、そのときに「怠けている」と一概に決めつけることは逆効果をもたらす恐れがあります。受験うつにならないように、プレッシャーになるような言動は控えることが望ましいでしょう。
お子様の様子が以前とちがってきて、悪くなってきたときは、受験うつがはじまっている可能性があります。 こういったときに対応を間違えると、病気が悪化したり、取り返しがつかない結果を招いてしまう恐れも出てきます。
受験勉強をすることは誰だってつらいもの。しかし、つらくてつらくてたまらなくなってきたら、そのときは我慢してもいいことはありません。それは受験うつのはじまりかもしれません。
こころの状態をチェックしてみましょう。
簡単にできる、受験うつかどうかのチェックです。
以下の設問に「はい・いいえ」の二択でご回答ください。
1 | まじめで几帳面で、何でもいい加減に終わらせるのは好きではない |
2 | 何かひとつのことをはじめると、最後までやり遂げないと気が済まない |
3 | ポジティブというよりはネガティブなほうだと自覚している |
4 | 学校やクラスが変わると、慣れるのに時間がかかる |
5 | 思っていることを上手に言い表せないことがある |
6 | やることがたくさんあると、どれから手をつけたらいいのかよく迷ってしまう |
1 | 迫ってきた受験に対して大きな危機感を抱いている |
2 | 教科書や問題集に取り組もうとしても、どうしてもスイッチが入らない |
3 | 物覚えが悪くなって、すぐに何でも忘れてしまう |
4 | 何もしていないのに疲れを激しく感じることがよくある |
5 | 最近、疲れていてもよく眠れないことが続いている |
6 | 食欲がなくて痩せてきている、あるいは逆に猛烈に食べたくなることがある |
7 | 人がたくさんいる場所に行くのがおっくうになる |
8 | 親や先生とうまくコミュニケーションをとれなくなっている |
9 | たまに、この世からいなくなってしまいたいと思うことがある |
「チェック1」が3つ以上、「チェック2」も3つ以上あてはまっている場合、受験うつが進行している疑いがあります。早急に、受験うつの診察を受けることをおすすめします。