不安とは「気がかりな心の状態。安心できないさま」のことをいいますが、それは誰もが感じるもので、不安を感じるからといって日常生活に支障をきたすことはあまりありません。ところが、誰もが感じる程度をはるかに超える不安を持ち、それがもとで日常生活に支障をきたしてしまう「不安障害」という病気があります。全般性不安障害(Generalized Anxiety Disorder:GAD)も不安障害の中の一つで、「特定の状況の限定されない、理由の定まらない不安や心配」が長期間続き、このような不安や心配に「こころやからだ」の症状が伴う病気です。
全般性不安障害の患者数はパニック障害の患者数より3~4倍多いとされ、1000人に64人くらいが経験すると報告されており、まれな病気ではないと言えます。
何かにつけて過剰な心配や不安がつきまとい、それが慢性的に続く(診断基準では6ヶ月以上)のが特徴で、不安に伴ういろいろな精神身体症状が現れます。
心配や不安は、次の症状のうち3つ以上を伴っている。
GADの患者さんが訴える症状は多岐にわたり様々なものがあります。心配と不安を過剰に持つことが、いかに「こころやからだ」に悪い影響を与えるかがわかります。
全般性不安障害(GAD)がどうして起こるのか?
原因は分かっていませんが、遺伝的要因や神経質の性格、現在のストレス状態や自律神経の障害などが発症の影響だと言われています。
また、生活上のストレスが関与している場合が多いと言われていますが、GADの患者さんが持つ心配や不安の原因は、ある特定のことに限定されるわけではなく、「家庭生活」「仕事」「学校」「健康」「近所づきあい」「地震や大雨などの天災」など、あらゆることが心配や不安の対象になります。そして、自分ではどうすることもできない事柄についても深刻に悩み、心配や不安をコントロールできなくなって、「こころやからだ」の調子が悪くなり、日常生活に支障をきたしてしまいます。
全般性不安障害(GAD)の治療法には大きく分けて「薬物療法」と「精神療法」の二つがあります。全般性不安障害(GAD)の本態(病気のもと)は不安にありますので、まずは薬を使って、不安をコントロール可能なくらいまで軽くし、精神療法によって患者さん自身が不安をコントロールできるようにトレーニングしていきます。二つの治療法は単独で行われたり、併用して行われます。いずれの治療法も専門医と相談の上、患者さん自身が納得して積極的に治療に参加することが大切です。
薬物療法 | 海外では、早い時期から薬物による治療の研究が盛んに行われており、既に全般性不安障害(GAD)の治療薬として承認され、患者さんの治療に使われている薬(一般名:パロキセチンなど)もあります。 一方、日本では、全般性不安障害(GAD)という病名で国(厚生労働省)から承認されている薬はなく、抗うつ薬や抗不安薬などを用いて治療が行われているのが現状です。 |
精神療法 | 全般性不安障害(GAD)の発病の原因が、患者さんの生育歴や性格にあるような場合は、精神療法も重要となります。精神療法には、カウンセリング、認知行動療法、セルフコントロール法などがありますが、いずれも無意識に存在している「不安の根源」を探し、そのコントロールを目指すものです。 精神療法は、薬物療法と違って副作用が少ないのが利点ですが、患者さん自身の努力がかなり必要なことや、主治医の先生との相性などもあり、効果にバラツキが出る場合があります。 |