手を洗ってもきれいになった気がせずに、何時間も洗い続けてしまう。戸締まりをしたかどうかが気になり、何度も鍵を確認してしまう。他人を傷つけてしまうのが恐くて、人間関係がうまくいかない。ある考えを追い払いたいのに追い払えなくて悩み続けてしまう。順序や左右対称にとらわれてしまう。このように、小さな事が気になりすぎる症状を強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder:OCD)といいます。
この病気のおもな症状は、不要な考えが心の中に繰り返し起こる「強迫観念」と、それを打ち消すために行われるさまざまな「強迫行為」です。強迫観念とは、嫌な考えやイメージが繰り返し生じること。強迫行為とは、強迫観念を打ち消すために行うさまざまな行為。強迫儀式ともいいます。
強迫性障害(OCD)患者は、自分の強迫観念や強迫行為を人に知られないように隠していることが多いのです。しかし、症状が誰の眼にも隠せないほどになると、家族や友人、同僚などとの人間関係にも悪影響が出ます。家族の場合は巻き込まれて、掃除を強要されるなど強迫行為を手助けしなくてはならなくなることもあります。スムーズな作業や行動ができなくなるので、学業や仕事にも深刻な影響が出ます。仕事を続けられなくなったり、人間関係を遠ざけて引きこもりのような状態になる場合もあります。こうした生活全般への影響から、患者の3分の2にうつ症状が見られます。
人はなぜ、強迫性障害(OCD)になるのでしょうか?その原因はまだ正確には分かっていません。しかし、最近の研究から、強迫性障害(OCD)は神経伝達物質の一つであるセロトニンの代謝に関係があるということが分かってきました。
セロトニンは神経細胞に蓄えられており、神経細胞から放出されて次の細胞に神経の興奮情報を伝え、また元の神経細胞に戻ります。神経細胞間には、フリーセロトニンといい、自由に活動できるセロトニンが存在しますが、強迫性障害(OCD)の患者はこのフリーセロトニンの量が少ないといわれています。
強迫性障害(OCD)は、適切な治療によって治る病気です。症状の程度も現れ方も人によって違うので、自己判断で素人療法を行うのは危険です。まずは、通院しやすい地域にある病院の「精神科」や「精神神経科」を受診しましょう。そして、自分は本当に強迫性障害(OCD)なのかどうかを専門医に診断してもらいます。
強迫性障害(OCD)の治療法には、大きく分けて二つの方法、薬物療法と行動療法があり、多くの場合は両方が併用されます。どちらの治療も専門医の指導のもと、長期間かけて行ないます。現在、こうした治療で7~8割の方が、日常生活を送るのに支障のないレベルまで治っています。