アスペルガー症候群は2013年まで使われていた診断名です。今では通常自閉スペクトラム障害に統合されています。つまりアスペルガー症候群と自閉スペクトラム障害はほぼ同じものと考えていただいて問題ありません。なお自閉スペクトラム障害の人はADHD(注意欠如多動性障害)の特徴もあることが珍しくありません。日常生活や職場での生きづらさがどちらの特性により起因するか確認することが良いでしょう。
現在の分類では下記の診断名は、ASDのみになっています。
アスペルガー症候群 | ASDのうち、知的な能力が正常範囲以上で、言語発達の遅れもない方をアスペルガー症候群と呼びます。 |
自閉症 | ASDのうち、言語発達に遅れがある方を自閉症と呼びます。 |
ASDには大きく分けて3つの症状があります。「コミュニケーションの障害」、「対人関係の障害」、「限定された物事へのこだわり・興味」の3つです。
(1)コミュニケーションの障害 | 表面上は問題なく会話できるのですが、その会話の裏側や行間を読むことが苦手です。明確な言葉がないと理解がむずかしく、比喩表現などをそのままの意味で鵜呑みにしてしまう傾向があるため、人の言葉を勘違いしやすく、傷つきやすい面があります。 |
(2)対人関係の障害 | 場の空気を読むことに困難さがあり、相手の気持ちを理解したりそれに寄り添った言動が苦手な傾向にあります。そのため、社会的なルールやその場の雰囲気を平気で無視をしたような言動になりがちで、対人関係を上手に築くことが難しいです。 |
(3)限定された物事へのこだわり・興味 | いったん興味を持つと過剰といえるほど熱中します。法則性や規則性のあるものを好み、異常なほどのこだわりを見せることがあります。その法則や規則が崩れることを極端に嫌う傾向があります。 |
1 | 明確な指示がないと動けない。 |
2 | 場の空気を読んだり、その場の空気に沿った対応が苦手。 |
3 | 冗談が通じず、会話の行間や間を読むことが苦手。 |
4 | 曖昧なことを理解するのが難しい。 |
5 | 好きなことには集中してやり続ける、話し続ける。 |
6 | スケジュール管理が苦手。 |
7 | 自分が興味のないことは頑なに手を出そうとしない。 |
8 | 急な変更にうまく対応できず、だまされやすい。 |
9 | 名前を呼ばれないと自分だと気が付かない。 |
10 | 相手の気持ちを慮れない、人を傷つけることを平気で言う。 |
上記に付随した細かな症状が他にいくつもありますが、基本的には自分以外の何か(人や物事)にうまく共感できない、言い回しが不適切などのコミュニケーションにおける困難さが主な症状となります。一方で、一度興味を持った物事に対しては、異常なほどのこだわりや集中力、記憶力を発揮する場合もあります。さらに、ADHDなど他の障害の症状を持ちあわせている場合もあります。
アスペルガー症候群は知的な遅れがなく、見た目などからは分かりづらいため、気付くのが難しい障害の一つです。明確な診断年齢はありませんが、各年代によく見られる症状を参考にしつつ、総合的に確認すると気付くきっかけになりやすいと言えるでしょう。
乳児期(0~1歳) |
乳児期にはアスペルガー症候群の確定診断はほぼ出ないと言ってよいでしょう。ただし、のちにアスペルガー症候群と診断された人達の中には、乳児期に特徴的な行動を共通してとっていたことが多いです。同年齢の子どもと比較して、下記のような傾向が見られる場合があります。
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幼児期(1歳~小学校就学) |
同年齢の子どもと比較して、下記のような傾向が見られる場合があります。
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学童期(6~12歳) |
同年齢の子どもと比較して、下記のような傾向が見られる場合があります。
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青年期以降(12歳~) |
同年齢の子どもと比較して、下記のような傾向が見られる場合があります。
思春期の頃などには、適応障害が強くなり、うつや不登校などの二次障害や合併症をきっかけに気付くこともあります。大人になってからの診断については、本人の自覚や、他者からの指摘により気付くことも多いようです。 |
二次障害の症状 |
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1 | 表出性・受容性言語や認知能力の発達において、臨床的に明らかな全般的遅延はないこと。診断にあたっては、2歳までに単語の使用ができており、また3歳までに意思の伝達のための二語文(フレーズ)を使えていることが必要である。身辺処理や適応行動および周囲に向ける好奇心は、生後3年間は正常な知的発達に見合うレベルでなければならない。しかし、運動面での発達は多少遅延することがあり、運動の不器用さはよくある(ただし、診断に必須ではない)。突出した特殊技能が、しばしば異常な没頭にともなってみられるが、診断に必須ではない。 |
2 |
社会的相互関係における質的異常があること(自閉症と同様の診断基準)。
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3 |
度はずれに限定された興味、もしくは、限定的・反復的・常同的な行動・関心・活動性のパターン(自閉症と同様の診断基準。しかし、奇妙な運動、および遊具の一部分や本質的でない要素へのこだわりをともなうことは稀である)。次に上げる領域のうち少なくとも1項が存在すること。
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4 | 障害は、広汎性発達障害の他の亜型、単純型分裂病、分裂病型障害、強迫性障害、強迫性人格障害、小児期の反応性・脱抑制性愛着障害などによるものではない。 |
アスペルガー症候群(AS)の夫または妻(あるいはパートナー)と情緒的な相互関係が築けないために配偶者やパートナーに生じる、身体的・精神的症状を表す言葉です。アスペルガー症候群の伴侶を持った配偶者は、コミュニケーションがうまくいかず、わかってもらえないことから自信を失ってしまいます。また、世間的には問題なく見えるアスペルガーの伴侶への不満を口にしても、人々から信じてもらえず、その葛藤から精神的、身体的苦痛が生じるという仮説です。
症状 | 症状としては偏頭痛、体重の増加または減少、自己評価の低下、パニック障害、抑うつ、無気力などがあります。アスペルガー症候群の伴侶を持つ者の二次障害として問題となっていて、支援するためのカウンセリングがますます必要とされ、夫婦間のケアの重要性が指摘されています。 情緒的交流がうまくいかない配偶者やパートナーは、理由はわからないけれど苦しい、周囲は苦しんでいることを理解してくれないという二重の苦しみの状態にあります。本人が問題の本質がわからないこと、周囲が問題の存在さえ理解してくれないこと、この二つの要素が現在のカサンドラを巡る問題の本質になっています。 |
対処法 | 夫婦関係をより良く継続させるためには、どちらか一方だけの努力だけでは上手くいきません。話し合いがままならない関係に対しては専門家の介入という方法があります。 |